大正異聞奇譚3

「それで──何か用じゃったかの?」

そう問いかける久遠嬢の琥珀のような爛々とした目が私を貫いていた。

「貴方と似た人を見たことがあったもので…。うるさくしてすいません。」

「わしに似た者とな!しかし、世の中にはそっくりさんが3人は居ると聞くしのぉ。案外近場にそっくりさんがいるのやも知れぬ。」

久遠嬢は運ばれてきたほうじ茶を優雅に受け取り、ふーふーと覚まして少し啜る。

「お主らは高校生かの?近くの高校なら天原高じゃな?わしは少し離れた女学校に通っておるのじゃ。」

穏やかな会話はその後しばらく続き、私たちは先に店を出ることになった。帰り際、久遠嬢が私たちに

「ここにはよく来るからまた会うかもしれんな。その時は話し相手になってもらえるかの?」

と言い、二つ返事で引き受けた。

 

店の前で建御は雅を送ると言い、2人と別れ1人で家に帰った。

家に着いてすぐ自分の部屋のパソコンを起動し例のVtuberの動画を見てみる。やはり姿も声も喫茶店で会った久遠嬢そのものであり、疑いようもない。

たくさんの動画を遡ると自己紹介があった。それを見てみると幾つかの発見があった。彼女はれっきとした大正生まれで、なんと三越でパソコンが拵えられるらしい。呉服屋にパソコン…というかこの時代にパソコンが一般に売られている事がありえない。

動画を見ているうちにクラクラと目眩がしてきた。画面を閉じ深呼吸して心を落ち着ける。

どうやらこの世界は普通の、前までいた世界とは少し変わっているらしい。その差が今は軽微だが大きく歴史を変えてしまったり、実はもう目に見えないところで崩壊しかけているのではないかと思うと恐ろしく感じた。

(早く元の世界への帰り方を見つけなければ)

そう強く感じた。